Lv.1 キャラクターをつくる/経営者のキャラを認知する【経営・企画】
第一章 冒険をはじめる プロローグ
「はじめの一歩を間違えない」――小さく始めて、大きく勝つ!【スモールビジネスの準備戦略】

見出し
スモールビジネスの成功者は、自己認知の方法を知っている
あなたもこんな経験はありませんか?
- やりたいことが見つからない
- 起業や副業を始めたいが、何から手をつければいいのかわからない
- どんなビジネスをすべきか悩み、時間だけが過ぎてしまう
これは決して特別な悩みではありません。多くの人が「自分が本当にやりたいことは何なのか?」「どんなビジネスが向いているのか?」と模索し続けています。実際に、やりたいことが見つかるまで手が止まり、行動できなくなってしまうこともあるでしょう。
では、スモールビジネスの成功者は、どのようにこの課題を乗り越えているのでしょうか?
その答えの一つが「自己認知」です。
▷あなたに代わって、〝質問Qちゃん〟(起業志望――小さなカフェの開業を目指す、前向きでちょっと心配性)が、スモビジパーティーにいろいろ聞いてくれます。
スモールビジネスの旅を支える、最初のナビゲーターは、【経営・企画】担当の〝プレナー〟です。

ねえ、プレナー。自分のこととか、キャラクターっていわれても…なんだかよくわからないわ

うんうん。自分のことって実はいちばん難しいよね。だからこそ、わかりやすく説明するよ
自己認知が成功のカギを握る理由
スモールビジネスは、企業のブランドやビジョンが経営者自身の個性や価値観と直結します。つまり、自分自身を深く理解し、それをビジネスにどう活かすかを明確にすることが、成功の第一歩となります。RPGゲームを始める時、まず主人公のキャラクター設定からスタートするのと同じです。
自己認知がもたらすメリット
✓ ビジネスの方向性が定まる
→ 何をやるべきかが明確になり、迷いがなくなる
✓ ターゲット市場との共鳴が生まれる
→ 自分の価値観や強みを活かすことで、理想の顧客とつながりやすくなる
✓ 経営判断がスムーズになる
→「自分が何を大切にするのか?」が分かると、選択肢が整理され、意思決定が早くなる
たとえば、「どんな働き方が理想か?」という問いに対する答えが「自由に時間を使いたい」なら、時間に縛られにくいオンラインビジネスが向いているかもしれません。逆に、「人と直接関わることが好き」なら、対面サービスを重視したビジネスの方が適しています。
このように、自己認知ができると「どんなビジネスが自分に合っているのか?」のヒントが自然と見えてくるのです。
キャラクター設定が成功の根幹
自己認知を深めるための具体的な手法の一つが「キャラクター設定」です。
ビジネスの成功者たちは、自分自身を一つのブランドとして捉え、どのように見せるか、どのような価値を提供するかを戦略的に考えています。
なぜキャラクター設定が重要なのか? スモールビジネスは経営者の「人となり」が事業に大きく影響を与えます。同じ美容サロンでも、「洗練された都会的な雰囲気」を強調するのか、「アットホームで温かい雰囲気」を大事にするのかで、顧客層やサービス内容がまったく異なります。
- 事業の方向性がより明確になる
- ブランドの一貫性が生まれる
- 理想の顧客にメッセージが届きやすくなる
キャラクター設定を行うことで、これらの効果を得ることができます。
スモールビジネスにおける自己認知は非常に重要です。小規模経営では、経営者の考え方や行動がダイレクトに事業に反映されます。そのため、「自分が何を大切にするのか」「どんなビジネスが合っているのか」を理解することは、単なる自己分析ではなくビジネス戦略の一環なのです。
経営の出発点はキャラクターを設計することから――大企業にはない視点で個性を構築 3つのポイント
1)認知 → 判断 → 操作の手順を理解する!
成功するビジネスの最初のステップは「正しい認知」です。そのためには、「現状分析」も必要です。
自分の強みや価値観を正しく認識しなければ、判断や行動が的外れになり、成果を上げることはできません。これは、まるで車の運転のようなもの。標識や周囲の状況を正しく認識できなければ、誤った判断や操作につながり、事故を招いてしまいます。このプロセスを意識することで、ムダな遠回りを減らし、最適な道を選べるようになります。
認知が正確なら、判断が的確になり、適切な行動ができる!
自分の強みを明確に理解していれば、どんなビジネスに挑むべきかがクリアになり、無意味な試行錯誤を減らせます。逆に、自分のスキルや市場を誤って認識してしまうと、どれだけ努力をしても思うような結果にはたどり着きません。

まずはじめに、しっかり認知をする! が大事なのね

そうなんだ。最初のボタンを掛け違えると、ずっと間違えてしまうからね
2)ビジネスは「理想の自己像」からはじまる
スモールビジネスで成功するためには、「理想の自己像」を明確にすることが不可欠です。
あなたが 「どんな自分でありたいか?」 を明確に描くことで、ビジネスの方向性が定まり、迷わず進むことができます。
理想の自己像が、ビジネスの指針となる!
✓ たとえば…
- 「地域に貢献するリーダーになりたい」 → 地域密着型のサービスが適している
- 「自由に働けるライフスタイルを目指したい」 → オンラインビジネスが向いている
- 「専門的な知識を活かしたい」 → コンサルティングや講師業が適している
このように、理想の自己像を明確にすることで、適したビジネスモデルが見えてくるのです。
3)キャラクター設定がビジネスの選択肢を広げる
自分自身のキャラクターを明確にすることで、ビジネスの選択肢は一気に広がります。
「自分がどんなタイプの人間なのか?」を理解することで、適したビジネスモデルや市場が見えてくるからです。人と深く関わることが好きなら、コンサルティングやカウンセリングのような個別指導型ビジネスが適しているかもしれません。逆に、クリエイティブな作業に没頭したいなら、デザインやプログラミングのような専門職がしっくりくるでしょう。
キャラクター設定を行うことで、ビジネスの方向性が明確になり、自然とターゲット顧客ともマッチしやすくなります。さらに、自分の特性に合ったビジネスを選ぶことで、一貫性のあるブランドを築くことができ、競争の激しい市場においても独自性を打ち出しやすくなります。

キャラクターをつくると選択肢が増えるって、どういうことなの?

自分の特性に応じた働き方やビジネスを発見しやすくなるんだ。その結果いい選択肢が増えるんだね
「何をするか」よりも「誰として生きるか」を意識すること――。
その視点が定まることで、ビジネスの軸がぶれず、より自分らしい働き方を実現できるようになるのです。
3つのステップ
キャラクター設定は難しく感じるかもしれませんが、まずはこの3つのステップから始めれば、ビジネスの方向性がクリアになります。それでは見ていきましょう。
① やりたくないことから考える
「やりたいことがわからない」――これは、多くの人が抱える共通の悩みです。
実は、やりたいことを探すよりも、「やりたくないことを明確にする」方が、より効率的に自分に合った選択肢を見つけることができます。
人は過去の経験に基づいて未来を考える傾向があります。しかし、自分が経験していないことの中に、本当にやりたいことがある可能性もあるため、経験の枠内で考えてしまうと選択肢が狭くなってしまいます。そこで、「やりたくないこと」を先にリストアップすることで、不必要な選択肢を除外し、本当にやりたいことが見えてくるのです。
✓ たとえば…
- 体力仕事は避けたい → オンラインビジネスが向いているかも
- 人間関係のストレスが少ない仕事がいい → フリーランスや一人で完結する仕事が適している
- 満員電車での通勤をしたくない → 在宅やリモートワークを軸にしたビジネスが向いている
このように「やりたくないこと」を明確にすることで、自分の価値観に合ったビジネスの方向性が自然と浮かび上がります。

なるほど! まずはやりたくないことを具体的に考えるのね

そうなんだ。そうすることで、やりたいことに近づくんだよね
ただし、注意点として「やりたくないことをリストアップしすぎない」ことが大切です。制限が多すぎると、逆に選択肢が狭まり、何もできなくなってしまう可能性があります。まずは3つ程度に絞ることで、バランスよく考えることができます。
また、スモールビジネスを始める際には、「起業」と「副業」どちらで取り組むかを先に決めることも重要です。副業から始めて、いまの職場を辞めずに進めるのか? それとも本格的に独立するのか? この立ち位置を明確にするだけでも、事業の方向性が決まりやすくなります。
やりたいことを無理に見つけようとせず、まずはやりたくないことを整理することで、自然と進むべき方向が見えてくるのです。
② なりたい自分を思い描く
次のステップは、「理想の自分」を具体的に思い描くことです。「どんな自分でありたいのか?」を明確にすることで、やりたいことや目指すビジネスが自然と見えてきます。
これはごく簡単なことからで大丈夫です。「お金持ちになりたい」「自由なライフスタイルを送りたい」「家族と年に一度は海外旅行をしたい」といった理想の状態を考えてみましょう。こうした理想像を持つことで、「その理想を叶えるためにはどんなビジネスが必要か?」という視点が生まれ、選択肢が具体的になっていきます。
人は過去の経験に縛られがちですが、理想の未来像を明確にすることで、いまの行動が変わります。目指すべき未来が明確になれば、そこに向かって必要なスキルを身につけたり、適したビジネスモデルを考えたりすることができます。理想の未来像が「目標」となり、それを叶えるための行動を積み重ねることで、理想の状態に近づいていくのです。

こんな簡単なことでいいの?

うん。複雑に考えず正直な気持ちになるのがポイントだね
③ 自分の性格を知る
最後のステップは、「自分の性格を知る」ことです。スモールビジネスは経営者の価値観やスタイルが事業に強く反映されるため、自分に合った働き方を選ぶことが成功への近道となります。
しかし、一言で「性格」といっても、ビジネスにどのように活かせばよいのか? ここでは、スモールビジネスの方向性を決めるためのシンプルな診断をしてみましょう。次の4つのタイプのうち、あなたに一番近いものはどれでしょうか?
A. 多くの人と短期間の仕事をしたい
B. 多くの人と長期間の仕事をしたい
C. 少ない人と短期間の仕事をしたい
D. 少ない人と長期間の仕事をしたい
この4つの中から自分に当てはまるものを選ぶことで、あなたの性格に合ったビジネスの形が見えてきます。
✓ たとえば…
- 「多くの人と長期間の仕事をしたい」 → 飲食店経営や教育ビジネスなど、顧客と継続的に関わる事業が適している
- 「少ない人と短期間の仕事をしたい」 → プロジェクトベースの仕事や、単発案件を扱うフリーランス向き
どのタイプが正しいというものではなく、「あなたの価値観に合った選択肢を見つけること」が大切です。


こんな方法で自分に合ったビジネスのカタチってわかるのね!

スモールビジネスでは、この『事業規模と事業期間』を意識するのが実はとても重要なんだよ
このように、自身の性格を起業や副業をしたいあなたのキャラクターとして反映をさせることで、あなたらしい価値観に沿った「事業規模と事業期間」を導くことが可能になります。
※スモールビジネスの原則でもある「十分な規模と適切な期間」。これについては、✓【Lv.31 販売の上限を設定する】で、詳しく解説します。また、スモールビジネスオーナーの目指す収入についても触れます。楽しみにしてください。
何をするかよりも、誰として生きるかを決める それが〝自分〟というブランドと「物語」の始まり
ビジネスを始めるとき、多くの人は「何をすれば成功できるのか?」と考えます。しかし、スモールビジネスの本質は、「何をするか」ではなく「誰として生きるか」を決めることにあります。
スモールビジネスでは、大企業のように莫大な資本やブランドの力で勝負するのではなく、経営者自身の「人となり」や「価値観」そのものがブランドとなるからです。どれだけ優れた商品やサービスを提供していたとしても、「誰がそれを届けるのか?」によって、顧客の感じ方も選択基準も変わります。
同じデザインの洋服を売るお店でも、「環境に配慮したサステナブルブランド」として発信するのか、「都会的で洗練されたライフスタイル」を提案するのかによって、ターゲットも価格設定もブランドイメージもまったく異なるように。だからこそ、ビジネスの出発点は「何を売るか?」ではなく、「自分はどんな存在として価値を届けるのか?」を決めることなのです。
あなた自身が「ブランド」となるスモールビジネスの世界
スモールビジネスにおいては、 経営者の個性や価値観そのものがブランドです。大企業であれば「企業理念」や「ビジョン」が会社の方向性を決めますが、スモールビジネスでは「あなた自身の生き方」そのものがビジョンとなり、事業の軸となります。「どんな自分でありたいか?」という問いは、「どんなビジネスをすべきか?」を決める指針となります。
「何をするか」に目を向ける前に、「どんな自分で生きたいか?」を明確にすること。これこそが、スモールビジネスを成功と成長へと導く「自己ブランド構築」の〝はじめの一歩〟なのです。
小規模経営者にとって、「この人から買いたい」「この人に相談したい」と思われることが、最大の競争優位性になります。ブランドを持たない商品やサービスは、単なる「選択肢のひとつ」に過ぎません。しかし、「あなたの提供する価値だからこそ選びたい」と思われるようになれば、それは他にはない唯一無二のブランドとなります。
ブランディングとは、大がかりなマーケティング戦略を駆使することではなく、「あなたがどんな生き方をしたいのか?」を明確にし、それを一貫して発信することです。
何をするかではなく、「誰として価値を届けるのか?」を考えることが、あなたの「スモールビジネス物語」の始まりです――。
それでは、次のレベルへご案内します。
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寺本 智(てらもと さとし)
小規模経営学者 | スモビジ大学長 | 小さいからこそ「個性と安定が両立」する『小規模経営学』を体系化 | スモールビジネス分野で、教育・コンサルティング・小説を執筆 | スモールビジネスコンサルタントとして、10年以上にわたり、従業員0人から20人まで(商業・サービス業は基本5人以下)の小規模企業を200社以上サポート。
活動理念は、『小さな事業を大きな主役へ』。一人ひとりが持つ個性と、経済的な安定。この2つが両立する――そんな〝小さな経営の在り方〟と、スモールビジネスを200社以上サポートした実体験から得た、「小さくても大きな成果を導くことができる」独自の文法を、小規模事業の【6つのフェーズ】と【6つのカテゴリー】に合わせて体系化。
ビジョンは、小さな事業が大きな主役となり、『個性と安定が、両立する社会』――、「一億総スモールビジネス」。
