Lv.10 仲間を集める/人材の見つけ方 求人方法【人事・バックオフィス】

「あなたを支えてくれる人」との相互理解と相互支援が、スモールビジネスを成功へと導く

「あなたを支えてくれる人」と聞いて、誰を想像しますか?
 スモールビジネスの本質とは、小規模なのに「一人で完結しない」というところにあります。いやむしろ、小規模だからこそ、一人だけでゴールができないビジネスといえます。
 たしかに、はじめは一人で事業を立ち上げる方は多いです。しかし、次第に感じるのです。「自分ひとりでは回らない」「支えてくれる人がいてくれたら」と。

 そう、スモールビジネスにとって、仲間の存在は〝売上〟や〝利益〟に直接的な影響を与えます。たとえば、信頼できる事務スタッフがひとり入るだけで、経営者の手が空き、顧客との対応や新しい戦略に集中できるようになります。それだけで、事業のステージが変わることも珍しくありません。
 しかも、小さな事業では大企業のように「人手が足りないから新卒を大量採用しよう」といった発想はありません。ここでは、「この人と一緒にやりたい」「この人なら支え合える」――そう思える関係こそが、〝最強のチームをつくる〟となります。

質問Qちゃん

ねえ、ソウム。人って〝雇う〟ものだと思ってたんだけど、それじゃダメなの?」

僧侶ソウム

Qちゃん。良い質問。雇うって言葉には〝使う〟ってニュアンスがあるよね。でもね、小規模経営では〝支え合う〟って感覚のほうがずっと大切なのよ

大切なのは、「相互理解と相互支援」

 経営者は、仲間の強みや価値観を理解する。仲間もまた、経営者の想いや事業の意義を理解する。お互いが「わかり合おう」とする「相互理解」こそが、信頼を育みます。その相互理解をするうえで、とても有効な方法があります。それは、次のような「マインドセット」をすることです。

✓ お互いの違いを理解するための「マインドセット」

  • 「価値観(好きなこと/嫌いなこと)」
  • 「信念(正しいと思っていること/間違いだと思っていること)」
  • 「世界観(美しいと感じていること/格好が悪いと感じていること」

 この3つを「マインドセット」することが、チームの心理的安全性には欠かせません。
 自分とメンバーのこのマインドセットを理解し合うことで、お互いの違いに気づけますし、良好な関係性を探索できます。

 そしてもう一つ大切なのが、「相互支援」。スモールビジネスでは、役職や肩書きよりも、「いま、困ってるからちょっと手伝うね」「ありがとう、助かった!」という人間関係が土台になります。
 これが備わっているチームは〝柔軟で、しなやかで、強い〟といえるでしょう。

 だからこそ、スモールビジネスにおける〝仲間集め〟は、「求人」というよりも「パーティーメンバーの招集」に自然と近くなります。
 冒険に出るとき、頼れる剣士や魔法使いを集めるように、「どんな力が必要か?」を明確にし、「誰となら一緒に進んでいけるのか?」を見極める必要があります。

「相互理解と相互支援」。この2つがある関係性は、単なる雇用関係を超え、スモールビジネスの成功に欠かせない要素といって間違いありません――。

質問Qちゃん

なるほど! 一緒に働く仲間と、どう支え合えるかが大事なのね!

僧侶ソウム

その通り! 人数が少ない分、関係性がとても大切。まさに信頼が資本になるの

パーティーを結成する――求人は「人を集める」ではなく「役割に合う仲間を迎える」こと 3つのポイント

1)まず描くべきは〝見えない人ではなく役割〟

「求人を出そう」となったとき、多くの人が「どんな人が来てくれるか?」を真っ先に考えます。
 しかし、スモールビジネスにおいて大切なのは、その前に「何の役割をお願いしたいのか?」を明確に描くことなのです。
たとえば…

  • 事務を正確にこなしてくれる人がほしいのか?
  • SNSの発信やデザインをお願いしたいのか?
  • 顧客対応を安心して任せられる人が必要なのか?

 この〝役割の棚卸し〟こそが、仲間探しの出発点です。「来るかもしれない人」に合わせて考えるのではなく、「この事業に必要なポジションはここです」と明確にすることが、結果的に、相性の合う仲間との出会いを引き寄せてくれます。

質問Qちゃん

求人って、誰かが来てくれるのを待つ感じだったんだけど…

僧侶ソウム

それだと運任せになっちゃうわ。役割を決めておくことで、必要な人が自然と見えてくるのよ

2)想いを言語化し、「この人と働きたい」と思ってもらえること

 求人とは、「人を選ぶ場」であると同時に、「あなたが選ばれる場」でもあります。
 小規模経営においてはとくに、「仕事内容」よりも「想い」に共感して仲間になってくれる人の方が、長く、深く、良い関係を築くことができます。
 だからこそ、「どんな事業なのか」だけでなく、

なぜこの事業をやっているのか?
どんな未来をつくりたいのか?
仲間とどんな関係性を築きたいのか?

 という、経営者の〝人となり〟を言葉にすることが大切です。
 求人票は、ただの募集文ではありません。それは、あなたの想いを届ける「ラブレター」のようなもの。
「一緒に働きたい」と思ってもらえるかどうかは、給与でも条件でもなく、〝想いを届けられるか〟にかかっているのです。

質問Qちゃん

求人って、スキルとか資格が合うかどうかだけの話じゃないんだね…

僧侶ソウム

そう。想いに共感してくれる人が現れたら、スモールビジネスでは最強の仲間になるのよ

3)個性と相性で選ぶ「小規模経営の最強布陣」

 スモールビジネスにとって、人数の少ないチームは「組織」ではなく、まさに「パーティー」です。戦士、魔法使い、僧侶、狩人――それぞれの能力が違うからこそ、お互いを補い合いながら先に進める。
「スキルが高いか、キャリアがあるか」よりも大切なのは、「いまの事業にとって必要な個性」と、「自分たちと合う相性」です。

 実は、この「相性」がうまくいくと、スモールビジネスは一気にブレイクスルーします。
 人が増えたからではなく、「化学反応」が起きたからです。
「どんな性格か」「どんな働き方が好きか」「どこに価値を置いているか」そうした内面的な個性を見て、「一緒にいると伸びそう」「安心できる」と感じる人こそ、あなたのビジネスにおける〝最強の仲間〟となるのです。
 このように、求人を「人を集める作業」ではなく、「役割を明確にし、想いを伝え、相性で迎える」という3視点で捉え直すことによって、あなたのスモールビジネスは、より〝自分たちらしく〟強く、しなやかに、最強布陣へと変貌していきます。

3つのステップ

 求人とは、単に「人を集める」行為ではありません。スモールビジネスにおいては、事業の目的やチームの構造に合った〝役割〟を見極め、そのポジションにふさわしい仲間を迎え入れるプロセスです。ここでは、その実践的な3つのステップを紹介します。

① 必要な役割を「ジョブカード」に書き出す――〝人物像ではなく役割像〟を可視化する

「いい人がいたら雇いたい――」。
 よく聞く言葉ですが、この発想そのものが、スモールビジネスの採用を曇らせる最大の要因です。なぜなら、「いい人」というのはあまりに曖昧で、現実には存在しない理想像に過ぎません。さらにいえば、そんな偶然の出会いに任せていては、いつまでも人材との縁は訪れないでしょう。
 ここで大切なのは、「どんな人を迎えるか」ではなく、「どんな役割を担ってもらいたいか」を明確にすることです。
たとえば…

  • 経理を週に数時間だけ任せたいのか?
  • SNSの投稿とデザインを、日常的に任せたいのか?
  • 顧客対応の現場を支えてほしいのか?

 こうした〝役割の中身〟を具体化することが、仲間探しの第一歩。名前も顔もまだない未来の仲間に向けて、「あなたにお願いしたいことはこれです」と伝える準備、それが小規模経営流の「ジョブカード」です。

✓ ジョブカードに書き出すべき要素は、次の4つ

1 求めるスキルや得意分野(Excel操作、接客経験、SNS運用など)
2 働く時間の想定スケジュー(フルタイム・月曜3時間・金曜半日など)3 任せたい仕事の分量と具体的な業務内容
4 既存メンバーとの関わり方やサポート体制

 この内容をたとえば、A4一枚でまとめて可視化しましょう。そうすることで、自分の頭の中にあった漠然としたイメージが、くっきりとした「役割像」に変わります。
 これは求人のためだけではなく、自分や自社の業務整理にもつながる一石二鳥の取り組みです。

質問Qちゃん

ソウム。求人って〝人を探す〟ってことじゃないの?

僧侶ソウム

そう思いがちだけどね、実は〝役割〟が先にあるの。人ありきじゃなくて、役割を細分化することがとても大事なのよ

② 求人票は「募集要項」ではなく「想いのポスター」として書く

 スモールビジネスにとっての求人票は、ただの「募集要項」ではありません。それはまるで、町に貼り出すポスターのようなもの――。
 通りかかった誰かが立ち止まり、「なんだか気になる」「この人と一緒に働いてみたい」と思えるような、心に刺さる掲示物なのです。
 だからこそ、書くべき内容は、「給与・時間・業務内容」といった条件だけでは不十分。むしろ、条件を超えた〝想い〟があるかどうかが、最初の共鳴ポイントになります。

 次のような言葉が入っていると、応募者の心に届きやすくなります。

なぜこの仕事をしているのか?(原点・使命)
この事業を通して、どんな世界をつくりたいのか?(未来ビジョン)
どんな力を、どんな人から借りたいのか?(呼びかけ)

 たとえばこんな書き出しならどうでしょう?
「お客さまの〝ありがとう〟が、今日も私の背中を押してくれる――だからこの場所を、誰かの一日をそっと支える『心の待合室』にしたいんです。そんな未来とお店を、一緒に育ててくれる仲間を探しています」

 条件だけでなく、あなたの言葉で、あなたの未来を語る
 これこそが、スモールビジネスの求人において、最も力を持つアプローチです。なぜなら、大企業のようにネームバリューや待遇で惹きつけるのではなく、「共感」こそが、最大の武器だからです。

質問Qちゃん

求人票って、条件だけ書けばいいと思ってたよ〜

僧侶ソウム

大きな企業はそれでも人が集まるけど、小さな事業では〝想い〟を伝えるのはマストよね

 こうした〝想いのポスター型〟の求人票は、求人サイトに掲載するだけでなく、店舗内やSNSなどでも発信すると効果的です。あなたの人柄が滲み出る言葉は、それだけで「この人のもとで働きたい」と思わせる強力なメッセージになります。

③ 面接は「価値観のすり合わせミーティング」だと心得る

 いよいよ出会えた候補者との面接。そこでただの「質疑応答」で終わってしまうのは、あまりにも惜しい時間です。スモールビジネスでは、スキルの高さ以上に、「価値観の相性」が一緒に働けるかどうかを決めていきます。
 面接とは、経歴を聞く場ではなく、お互いの価値観やスタンス、理想の働き方をすり合わせる〝対話の場〟。履歴書の内容や職務経歴よりも、

✓「どんな瞬間に嬉しさを感じるか」
✓「どんな働き方に安心できるか」
✓「どんな人と関わると自分らしくいられるか」

 そんな会話の中に、未来の関係性をつくるヒントが詰まっています。面接で問うべきは「これまで」ではなく、「これから一緒に歩んでいけるかどうか」。
「この人となら、大変なときも笑い合えるかもしれない」そう思える感覚こそが、スモールビジネスにとって最良の採用基準です。

 こういった採用方法は、単に「人を迎え入れる」ための準備ではなく、〝仲間として歩んでいく関係性〟を築くための基盤となる力。
 だからこそ、小規模経営における求人は〝仲間探し〟ではなく〝仲間づくり〟の意識で。一人ひとりと心を通わせることが、信頼を育み、しなやかで強いチームを生み出していくのです。

小規模経営流 最適な人材の見つけ方――求人方法と採用の工夫

 スモールビジネスにとって、「人を雇う」という行為は、単なる人手不足の解消ではありません。
 それは、未来を共に歩む「仲間との出会い」そのものです。だけど現実には――「求人を出したのに誰も来ない…」「応募はあったけど、どうも合わなかった…」そんな声も多く聞かれます。
 では、スモールビジネスにおいて、本当に〝人と出会える求人方法〟とは、どんな手段なのでしょうか?
 ここでは、大手企業と同じ土俵では戦わない「小規模経営流の求人と採用の工夫」を、具体的な方法を交えてお伝えしていきます。

ハローワークは無料で求人できる公的インフラ

 もっとも手軽かつ、意外と侮れないのが「ハローワーク」。地域に根ざした求職者層(とくに地元で働きたい主婦層やシニア層など)と出会える可能性があります。

  • 登録・掲載が無料
  • 地域密着型の求職者が多い
  • 応募者が実直で地元志向

 ただし、掲載文は画一的になりがちなので、「ジョブカード」や「想いのポスター」を事前に用意しておくことで、自社の魅力をしっかり伝える工夫が大切です。

Indeed・ジモティーなど無料掲載ができる求人サイト

 低予算でも効果が見込めるのが、無料でも掲載できる求人サイトの活用です。

  • Indeed(インディード)
    → 求人検索エンジンとして広く使われており、無料での掲載も可能
  • ジモティー(地元の掲示板)
    → 飲食・販売・介護などのアルバイト・パート系に強く、地元感のある求人が打ち出せる
  • しゅふJOB(主婦向け求人サイト)
    → 限られた時間でもスキルのある人材と出会える

 こうしたツールは「すぐに人が来る」わけではないものの、「誰と働きたいか」「どんな働き方があるか」を伝える場所として、継続的に活用することが大切です。

SNS・店舗発信こそ、スモールビジネスの真骨頂

大手企業と違い、スモールビジネスは「顔が見える経営」が強み。だからこそ、求人は〝広く告知するのではなく、誰かの心に刺す〟発信が効果的です。

Instagram・Facebook・X(旧Twitter)などのSNSに、求人の想いを投稿
店頭に、写真と共に求人ポスターを掲示(〝あなたの想い〟が伝わるように)
既存のお客様に「良い人がいたら紹介してください」と伝える

「求人媒体=第三者に任せること」ではなく、自分たちの言葉で、仲間を呼びかけるという意識が何より重要です。

「紹介・縁」もスモールビジネスの力になる

 スモールビジネスならではの強力な手段、それが「紹介」や「口コミ」です。

  • お客様に「こんな人探しています」と声をかける
  • 知人に「誰か良い人いないかな?」と気軽に相談する
  • 既存メンバーに「一緒に働いてみたい人いない?」と聞く

 これらはすべて、あなたの事業の世界観を知ってくれている人を介するため、マッチング率が高く、信頼の起点にもなります。

「働き方の柔軟さ」が選ばれる理由になる

 そして最後に、大手企業にないスモールビジネスの最大の強み——それは、「働き方の柔軟さ」です。

  • 子育て中でも働けるシフト制
  • 副業OK・パラレルキャリアとの両立歓迎
  • 在宅業務や週2勤務などの自由度

 こうした柔軟性は、それだけで「働きたい人」との出会いを増やします。関係性を築けば〝戦力化〟じゃなくて〝信頼化〟するのが小規模経営の特徴です。

「求人は、仲間集めのストーリーテリング」

 スモールビジネスにとって、求人とは「広告」ではなく「ストーリー」です。

✓ どんな世界をつくっているのか
✓ どんな仲間と歩んでいきたいのか
✓ どんな未来を共に育てたいのか

 あなたの言葉と、あなたのスタイルで、語ること。それが、唯一無二のチームをつくる秘訣。
「小さな事業」だからこそ生まれる、心のこもった求人が、きっとあなたにとってかけがえのない仲間との出会いをもたらしてくれるでしょう。


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もくじ/スモールビジネスの〝シン戦略〟――小さいからこそ「個性と安定が両立」する『小規模経営学』 スモビジクエスト攻略法

 私には、「経営に失敗」した過去があります――。  サラリーマン時代、広告の営業職で成績は良く、25歳で独立。商業施設のイベント業を手がけながら、飲食店を経営してい…

寺本 智(てらもと さとし)

 小規模経営学者 | スモビジ大学長 | 小さいからこそ「個性と安定が両立」する『小規模経営学』を体系化 | スモールビジネス分野で、教育・コンサルティング・小説を執筆 | スモールビジネスコンサルタントとして、10年以上にわたり、従業員0人から20人まで(商業・サービス業は基本5人以下)の小規模企業を200社以上サポート。

 活動理念は、『小さな事業を大きな主役へ』。一人ひとりが持つ個性と、経済的な安定。この2つが両立する――そんな〝小さな経営の在り方〟と、スモールビジネスを200社以上サポートした実体験から得た、「小さくても大きな成果を導くことができる」独自の文法を、小規模事業の【6つのフェーズ】と【6つのカテゴリー】に合わせて体系化

 ビジョンは、小さな事業が大きな主役となり、『個性と安定が、両立する社会』――、「一億総スモールビジネス」

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